2007年度日本魚類学会年会発表要旨(2)

水槽飼育下におけるメコンオオナマズPangasianodon gigasの頭部体色変化

Head color change of Mekong giant catfish, Pangasianodon gigas, in the Aquarium

波多野順、池谷幸樹、谷村俊介、堀由紀子
(岐阜県世界淡水魚園水族館アクアトト・ぎふ)

メコンオオナマズPangasianodon gigasは、メコン川水系のみに生息し、最大で3m、体重300kgに達する大型のナマズである。近年、生息域の開発や乱獲等によりその数は激減し絶滅が危惧されている。しかし、野生での生態はほとんど解明されておらず、飼育下での知見も少ないのが現状である。

 当水族館では2004年6月18日より、6個体のメコンオオナマズ(全長約130cm前後)を水量約110t、水温約28℃(平均28.7℃)、照明点灯時間を12時間とした恒常的条件で飼育している。そして飼育開始当初より、照明消灯後、メコンオオナマズの頭部中央に白色斑が現れる現象が観察された。この白色斑は照明点灯とともに体色と同じ黒色へと変化するため縮小し、消灯とともに再び大きくなり約3cmの楕円形を呈した。その後、白色斑の大きさは照明点灯時まで変化しなかった。この現象は毎日確認されている。

白色斑の出現する位置は松果体の真上と推測され、魚類における松果体上部の表皮色素の変化はこれまでに報告がない。また、白色斑の変化は照明設定時間と同期的に起きており、この現象には光環境が密接に関係することが示唆された。そして、松果体は光受容器官でもありメラトニン分泌を介した光情報伝達機能を有するとされることから、松果体上部に位置する白色斑の変化は、本種の日長周期形成を反映しているものと推察された。