2014年度日本魚類学会年会発表要旨

水槽飼育下での長期観察によるメコンオオナマズPangasianodon gigas
摂餌周期における雌雄差


Sexual difference in feeding cycle of Pangasianodon gigas : Long-term monitoring in an aquarium

池谷幸樹・波多野順・國崎亮・野口亮太・須田暁世・中野大輝(アクア・トトぎふ)
久米学(岐阜経済大学)
大原健一(岐阜県水産研究所)

メコンオオナマズPangasianodon gigas はメコン川水系にのみ生息し,絶滅の危機に瀕している世界最大のナマズ類である.本研究では,タイ国のアユタヤ内水面水産試験場から搬入した人工繁殖個体6個体を使用し,2004年6月18日から2014年6月17日までの10年間にわたり個体ごとの摂餌状況を調べた.一年を通じて照明点灯時間は12時間,水温は平均28.3℃を維持し,餌にはコイ用配合飼料を練り餌にして,毎日給餌した.その結果,雄では絶食を伴う摂餌周期性(304.3日, 365.2日, 405.8日周期)が確認され,何度も長期間の絶食(最長146日間)が観察された.その一方で,雌では摂餌周期性が不明瞭で長期絶食も数回しか確認されなかった.これらのことから,自然環境下においてメコンオオナマズの雄は,本種の餌となるシオグサ類(淡水産緑藻類)の消長(メコン川では乾季にのみ繁茂する)に合わせて長期絶食するのに対して,雌はそれとは無関係な摂餌生態を持つ可能性があることが示唆された.