第50回水族館飼育技術者研究会発表要旨

メコンオオナマズの輸送と、飼育下で得られたいくつかの知見について

堀由紀子、谷村俊介、竹嶋徹夫、○池谷幸樹
堀江俊介、波多野順、眞鍋美智子
(岐阜県世界淡水魚園水族館)

メコンオオナマズPangasianodon gigasはメコン川水系にのみ生息し、大きいものは全長3m、体重300kgに達する世界最大のナマズである。近年の流域開発や乱獲等によりその数が激減していることからタイ国では人工繁殖を試み、1983年にF1を、2001年にはF2を得ることに成功している。しかしその一方で野生での生態はほとんど解明されておらず、飼育下での知見も少ないのが現状である。

岐阜県世界淡水魚園水族館では2004年5月17日、タイ国のアユタヤ内水面水産試験場から人工繁殖個体6個体(体長113〜128cm)を各々酸素パック(水量約300l、輸送時水温26〜28℃)により、トラックと航空機で約16時間かけて輸送した。
輸送後は直接展示水槽(水量約70t、水温25.1〜30.7℃、pH7.0〜7.9)へ収容し、現在まで全個体を展示飼育している。収容して約1ヶ月後に魚体を底砂に擦り付ける行動が認められ、約3ヵ月後に寄生虫症(チョウ症)の発症を確認したが、これをジフルベンズロン(商品名:デミリン)を使用して駆虫した。また、収容当初より個体管理を行い、2004年6月18日より個体ごとの摂餌状況を調べた。餌はコイ用配合餌料を練り餌にしたものを用い、毎日給餌した。その結果、全個体で摂餌が止まるのを確認し、無摂餌期間は最短の個体で16日間、最長の個体では121日間続いた(平均57.8日間)。これまでのところ、水質との因果関係は認められず、摂餌期、無摂餌期を繰り返す個体が観察された。